推し活チケット高騰の背景を読む
私のところにも最近よく聞こえてくるんです。「またチケット代上がった」「でも結局買っちゃうんだよね」って話。で、結局これって採算取れるの?って疑問が湧いてくるわけです。
推し活人口は現在約1,400万人で、市場規模は3.5兆円に達しています。海外アイドル(K-POP)のコンサートチケットは10,001円〜15,000円が相場となり、VIP席は15,000円を超えるケースが多い状況です。テイラー・スウィフトの日本公演では一般席でも3万円という価格設定も話題になりました。興味深いのは、推し活層の27%が「無限∞」に支払えると回答している点です。
価格高騰の実態と構造変化
86%がコロナ前よりチケット代が「高くなったと感じる」と回答し、実際のデータでも価格上昇は顕著です。帝国劇場「モーツァルト!」のS席は2021年の14,500円から2024年には18,500円へと約3割値上げされています。ジャニーズ系もSTARTO社になって15,000円に上昇し、10年前、20年前は8,000円前後だったチケットが軒並み高騰しています。
この背景には複数の要因が重なっています。ツアー開催の膨大な費用にインフレが組み合わさり、コロナ後のツアー需要急増で労働者の請求額が増加し、最終的に消費者に価格転嫁されているのが実情です。ストリーミングの普及で楽曲使用料がアーティストにもたらす収入が大幅に減少し、多くのアーティストが利益面の損失をツアーで補おうとしている構造的変化も影響しています。
価格弾力性から見た推し活の特殊性
通常の経済理論では、価格弾力性(価格変動に対する需要の変化率)が重要な指標になります。一般的に、ブランド品・不動産・宝石などは価格弾力性が大きく、価格が上がると需要は減り、価格が下がれば需要が一気に高まるとされています。
しかし推し活市場では、この経済原則が通用しにくい現象が起きています。推し活層は「チケットの価格に対して相応の特典内容であると判断した場合」に多くの投資をするという行動パターンを示し、高級ブランド品では「値段が高いほどブランドが優れている」という顧客の心理が働き、逆に値段が上がると需要が増加するケースも見られます。これは推し活においても同様の心理メカニズムが働いていることを示唆しています。
収益構造を数字で読み解く
具体的な試算をしてみましょう。推し活層の平均年間消費額は約25万円で、チケット価格の主力ゾーンである10,000円〜15,000円を基準に考えると、年間16〜25公演程度の参加が可能な計算になります。
仮にアリーナ規模(収容15,000人)で平均チケット単価12,000円のコンサートを想定すれば、1公演あたりの売上は1.8億円です。会場費、制作費、人件費を含む総コストを60%と見積もっても、粗利は7,200万円確保できます。重要なのは、価格が高いと感じても、座席に「価値」を感じれば最高額チケットに応募・購入する行動パターンです。
この市場の特殊性は、推し活における投げ銭・メンバーシップなどの月額課金型サポートが「利他性」に基づく満足感に寄与し、ウェルビーイングに影響を与える点にあります。つまり、通常の商品購入とは異なる心理的価値が働いているのです。
実務で活用できる分析ポイント
• ブランド資産価値の定量評価:推し活市場では価格弾力性が0.5未満(非弾力的)の商材が多い。自社のエンタメコンテンツやブランド商品でも同様の非弾力性を持つセグメントを特定し、価格戦略に活用できる
• 顧客セグメント別の価格感度分析:推し活人口1,400万人のうち34歳以下と35歳以上がほぼ半々という年齢構成を参考に、自社顧客の年齢別価格感度を分析し、セグメント別価格設定の可能性を検討する
• 体験価値の収益化モデル設計:遠征費込みで月20万円超の支出という事例から分かるように、コアな体験を軸とした周辺消費の誘発モデルは、サービス業全般で応用可能な収益構造として参考にできる

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