予算超過は「想定内」だったが、管理体制が機能しなかった
おはようございます。今朝も電車で日経を眺めながら、万博開幕まで残り3ヶ月の記事を読んでいました。で、結局これって採算取れるの?という話です。
東京オリンピックは招致時7,340億円が最終的に3兆円を超えたと言われています。大阪万博も会場建設費が誘致時1,250億円から2,350億円に膨らみ、運営費も809億円から1,160億円に増額されました。これは単なる見積ミスではなく、構造的な問題があります。
なぜ予算は必ず膨らむのか 数字で見る実態
オックスフォード大学の調査によると、1960年以降のオリンピックの予算超過は平均156%です。つまり「予算が倍になる」のは業界標準なのです。最も安く済んだのは1964年東京オリンピックの2億8,000万ドル(当時)でしたが、これでも当初予算は上回っています。
予算規模で考えると、東京オリンピックの招致時7,340億円は「大会経費」と「関連経費」の区分で表面的な経費を抑えながら、必要のない支出を繰り返してきた結果です。関連経費を含む全体コストは国の予算書に分散計上されるため、総額が見えにくくなっています。
FP&A視点での論点 コンティンジェンシー管理が機能しない理由
一般企業なら予備費管理は基本中の基本です。コンティンジェンシー予備は「既知の未知」に備える予備費で、プロジェクトマネージャーの裁量で使用できますが、万博・オリンピックでは東京都、組織委員会、JOC、JPCの4つの団体が関わり、最高責任者があいまいで予算が増えても誰の責任にもならない状態でした。
東京オリンピックでは最大3,000億円の予備費を計上していましたが、実際の追加経費2,940億円はコロナ対策費960億円を含むなど、想定外要因が重なりました。しかし本質は、「市民に公表される予算はいわゆる『頭金』に過ぎず、本当のコストは計画段階ではなく実行段階で明らかになる」点にあります。
民間企業なら、予算超過20%で役員会マター、50%で事業中止検討レベルです。ところが公共プロジェクトでは「国家的プロジェクトだから」という大義名分で予算統制が甘くなります。
数字で読む試算 実はコスト管理手法は存在する
仮に東京オリンピック招致時に適切なコンティンジェンシー管理を行っていたとすれば、どうなっていたでしょうか。プロジェクト初期段階の概算見積もりは-50%~+100%の幅があり、予算化段階でも-10%~+25%とされています。
招致時7,340億円に対し、保守的に+100%のコンティンジェンシーを設定すれば1兆4,680億円。さらに「未知の未知」に備えるマネジメント予備を一定割合で積むとすれば、総額2兆円程度の予算設定が妥当だったはずです。最終コスト3兆円と比べれば、依然として超過していますが、ショックは半減できたでしょう。
大阪万博では2024年10月に「局配賦型」から「一括管理型」の予算管理体制に変更し、運営費総額1,160億円のフレームを堅持すると発表しました。これは民間企業では当然の統制強化ですが、開幕3ヶ月前での変更は「遅すぎる」対応です。
実務インプリケーション
経営企画・FP&A担当者が大型プロジェクトから学ぶべき教訓は以下3点です:
• 見積精度の段階的向上管理:プロジェクト初期は必ず幅を持った予算設定とし、進捗に応じて精度を上げていく。「確定予算」という概念は捨てる
• コンティンジェンシー予備の明示化:予備費は「隠れ予算」ではなく、リスク分析に基づく正当なコスト要素として堂々と予算計上する。既知リスク対応費と未知リスク対応費は分けて管理
• 責任主体の一元化:複数組織が関わるプロジェクトこそ、予算執行権限と責任を一つの組織に集約する。「みんなで決めたから誰も責任を取らない」構造を避ける
万博・オリンピックの予算超過は「予測可能だった失敗」です。適切なFP&A手法があれば防げた部分も多いのです。

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